あなたに私の体験を差し出す

この人と話す時にだけ表面化する癖がある。

それは自らの感情について話す時。
あなたのいびきが迷惑だ
という言い方をせずに
あなたのいびきをきくと私は迷惑な気持ちを体験する
という言い方をする。お互いに。

「あなたの好きにすれば」と言われた時、寂しさを体験した
あなたが不機嫌そうだった時、振り回されていると体験した
私はいま怒りを体験している

 

私たちは衣食住をともにする。自らの感情と体験について定期的に語らなければ、私たちも関係性もそのうち腐って異臭を放ち始める。

何度もその異臭を嗅いできたから、できるだけそれぞれの体験をその場に差し出すことが関係性に効くということを、どこか暗黙のところで嗅ぎ取ったからそうするのかもしれない。

あなたの体験と私の体験がどこか少しでも重なり続ける限り、そしてそれを差し出すことを思い出すことが出来る限り、私たちは細く長くともに生きられる気がする。